7月6日、オウム真理教事件の七死刑囚が、死刑を執行された。
 そして、記事を書くのに手間取っている内に、小池泰夫、廣瀬健一、豊田亨、横山真人、端本悟、宮前一明の六人までも死刑執行されてしまった。
 小池は、地下鉄サリン事件の実行犯であり、松本サリン事件では幇助的役割を果たした。廣瀬、豊田、横山の三人は、地下鉄サリン事件の実行犯である。端本は、坂本弁護士一家殺害の実行メンバーであり、松本サリン事件では、噴霧車の警備を担った。宮前は、坂本弁護士一家殺害事件の実行メンバーであり、信者一名への殺害事件に関与している。
 このうち、豊田亨は、真島事件と袖が擦れ合った程度の縁がある。松原智浩の弁護を引き受けているのは、豊田の弁護人である、宮田桂子弁護士だ。松原は二回目の再審請求である。豊田の第一次再審請求中の執行にも怒っただろうが、松原の執行可能性が現実味を増したことで、戦慄したのではないか。
 私は、豊田の執行を聞いて、ぞっとした。法廷や拘置所で見た松原の顔が思い浮かんだ。伊藤に至っては、再審請求もできていない状況である。今年はさすがに、これ以上の執行はしないかもしれない。しかし、伊藤と松原の順番が迫ってきていると感じられてならない。来年9月で、松原は死刑確定5年目となる。

 話をオウム事件に戻そう。前回執行されたのが、麻原と、その位の高い「重鎮」(実質的には奴隷と大差なかったと思えるが)であったとすれば、今回の執行は、末端の実行犯である。中でも、端本は組織内で位が低く、重大事件に二回関与したとはいえ、下っ端の役割であった。それだけに、余計に割り切れなさを感じる。
 この6人は、7月6日に執行された幹部と同様、麻原によりマインドコントロールされ、搾取、利用される存在であったという事情がある。加えて、幾人かには、以下のような事情がある。
 横山は実行犯ではあったが、彼の実行行為により死亡した人数は0名である。地下鉄サリン事件実行犯の中で、唯一無期懲役が求刑された林郁夫は、実行行為により2名を殺害している。また、彼は他にも一人の死に関与している。その林と比較し、あまりにも差がありはしないか。また、この差は、一名の殺害実行にとどまる廣瀬、豊田にも当てはまる事情である。
 端本悟は、坂本弁護士一家殺害事件の実行犯とはいえ、グループ内での序列は最下位と言ってよかった。グループの指示役は、村井秀夫と早川紀代秀であり、弁護士夫妻の殺害を実行したのは新実智光、赤ん坊の殺害を実行したのは中川智正である。現場での行為は、坂本弁護士を殴打したなどであり、生命を奪う行為は行っていない。もちろん端本にも重い責任はあるが、実行現場で大して重要な役割を果たしていなかったと言えるのではないか。また、松本サリン事件ではサリン噴霧車の運転と警備を担ったが、サリン噴霧車の運転・警備のみに関与した被告たちは、懲役17年、18年といった量刑となっている。松本サリン事件と二件の殺人に関与したオウム幹部は、最後まで麻原に帰依し続けたにもかかわらず、無期懲役の判決であった。これらと比較しても、端本の量刑は重すぎるのではないかと思っている。
 宮前一明は、坂本弁護士一家殺害事件について自首が成立している。また、同事件では、指示役ではなく、殺害実行行為も、坂本弁護士に対して「首を後ろから押さえる」という一部を行ったにとどまり、直接的に生命を奪う行為といえるか微妙である。自首が遅かったという非難はあるだろうが、それでも真相究明に大きく貢献したことは間違いない。
 このように、末端の実行犯たちには、役割の評価という点においても、首をかしげざるを得ない点が多い。
 しかし上川法相は、これらの事情を考慮することもなく、あっさりと死刑を執行してしまった。

 もともと、この記事のタイトルは「残った六死刑囚に恩赦を」とするつもりだった。だが、法務行政の体質を考えると、それは無理な話だったかもしれない。戦後、個別の情状により、個別恩赦となった死刑囚は極めて少ないのが現状だ。そして、再審請求の権利すら踏みにじる法務行政と政権である。恩赦という言葉など、六法全書のシミぐらいにしか考えていないであろう。