今、長野刑務所の中央単独棟の2階で寂しく生活している。
 でも、今の部屋は窓を覗けば、眼の前の建物から遠く向こうの山々まで、外の景色が一望できる。
 時折、昼から夕方頃の間にブサイクな烏の鳴き声が聞こえてくる。
 窓の外を覗くと、牢格子の向こうにその長野刑務所が廃墟にしている建物が、すぐ近くに見える。
 廃墟の屋上で真っ黒な大きい烏が、コンクリートを覆っているシートを嘴でくわえて、力いっぱいに羽を広げながら勢いよく一生懸命に引き千切ろうとしている。
 「なにしてんねん?」と、つい、私はつぶやく。
 そのシートは、めくれるものの千切れない。
 烏は何度も頑張っているが、とうとう疲れ切ったのか、羽を閉じて何か文句を言いたげに頭をかしげて鳴き出した。
 「カー」ではなく、「ギャー」と鳴く。
 ブサイクな声。
また再び、同じようにシートを引き千切ろうと、2回・3回と繰り返しているが何も変わらない。
 そんな烏に「アホタレ」と、私は無意識につぶやいている。
 アホタレは、とうとう本当に疲れ切って諦めたのか、今日もどこかへ飛んで行った。
 飛んでる時も「カー」ではなくて「ギャー」と鳴いている。
 ホンマにブサイクな声。
 飛んで行った烏に「またな、アホタレ」と、いつの間にか名前を付けていた私だった。
 ちなみに、あのシートを引き千切って何に使うのか?
 そんなことはどうでもいいけど、アホタレの鳴き声をどうにかして欲しいなぁ。
 「ギャー」ではなくて「カー」に。

 ホンマにブサイクやから。

Kazu


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