次に、住田紘一の死刑執行について。
住田死刑囚は、被害者に謝罪し、控訴を取り下げて死刑を確定させた。前科前歴もない。本当に死刑しかないといえたのか、疑問は残る。
何ら罪のない人間を殺害したことは事実であり、遺族の処罰感情については、当然だと思うので、それについては特に書くことはない。
ただ、気になった点が二つ。
記事の内容からしか判断できないが、遺族の手紙などに返信しなかったのは、単に拘置所が連絡を許さなかった可能性もある。また、住田被告が「自分には死刑しかない」と考え、本人なりの反省として、外部をシャットアウトして死刑執行を受け入れることに専念したのかもしれない。遺族の言葉を「真実」とする根拠は、記事中の言葉には示されていない。
また、遺族の永山判決や死刑適用の現状への理解について、無批判に報道していれば良いのだろうか。
永山判決であるが、「被害者一名では死刑にしてはいけない」という内容ではない。その証拠として、21世紀になってからも、殺人前科なし死者一名の事件で、高裁で死刑判決が下されている事件は存在する。
2004年10月29日には、女子高生誘拐殺人事件の坂本正人が東京高裁で逆転死刑判決を下されている。坂本は上告することなく確定した。
2005年3月19日には、女性強姦焼殺事件の服部純也が高裁で逆転死刑判決を下された。服部は上告し、2008年に最高裁で上告棄却。
2006年9月26日には、奈良女児殺害事件の小林薫に、奈良地裁で死刑判決が下され、控訴せずに確定した。
2009年3月18日には、名古屋闇サイト殺人事件の神田司に、名古屋地裁で死刑判決が下され、控訴取り下げにより確定している。
2011年3月1日には、横浜中華街店主射殺事件の熊谷徳久が、上告棄却され死刑が確定している。
これらの死刑囚たちは、奇しくも全員がすでに死刑執行されている。
住田以前の5人のうち、3人は高裁以上のレベルで死刑判決が支持されている。「死者一名では死刑になることはなかった」というのは誤導である。せいぜいが、死者一名の事件では死刑にある程度抑制的である、といえるに過ぎない。
なお、住田死刑囚は、裁判員制度での三人目の死刑確定者である。松原智浩は、四人目の死刑確定者だ。真島事件の死刑囚たちの死刑執行が近づいてきたように感じる。
最後に。全く報道されていないが、今回もまたVSフォーラムが死刑執行を支持する声明を出した。
7月13日執行の声明
その内容であるが、前回の田尻賢一の執行と、全く同じである。いや、一つだけ異なっている点があった。今回の執行人数として「2名」という文字を加えた点。それ以外は、全く前回と同一の内容である。
前回の声明
血の通わないテンプレートであり、「死刑執行」という、法の下に人命を奪う行為への、厳粛性や重大性にはそぐわない軽さと無機質さを感じる。死刑存置の立場にせよ、死刑執行の重大性への意識がここまで感じられないのは、法曹としていかがなものか。「今回の死刑執行に賛成」であり、法曹としてそれを意見表明するのであれば、より理を尽くして丁寧に説明を行うべきではないか。
また、西川の死刑執行は、再審請求中に行われた。被害者擁護の立場に立つとはいえ、「裁判を受ける権利」との整合性に全く思いを致さない姿勢には、疑問を感じる。
VSフォーラムが死刑廃止に反対の立場だということは、すでに周知されている。また死刑執行の場以外にもいくらでも意見を述べる機会はある。死刑廃止論者、死刑囚の支援者、あるいは死刑囚の親族の傷口に塩を塗り込む以外に、特段出す意義のない声明と感じられた。
住田死刑囚は、被害者に謝罪し、控訴を取り下げて死刑を確定させた。前科前歴もない。本当に死刑しかないといえたのか、疑問は残る。
何ら罪のない人間を殺害したことは事実であり、遺族の処罰感情については、当然だと思うので、それについては特に書くことはない。
ただ、気になった点が二つ。
記事の内容からしか判断できないが、遺族の手紙などに返信しなかったのは、単に拘置所が連絡を許さなかった可能性もある。また、住田被告が「自分には死刑しかない」と考え、本人なりの反省として、外部をシャットアウトして死刑執行を受け入れることに専念したのかもしれない。遺族の言葉を「真実」とする根拠は、記事中の言葉には示されていない。
また、遺族の永山判決や死刑適用の現状への理解について、無批判に報道していれば良いのだろうか。
永山判決であるが、「被害者一名では死刑にしてはいけない」という内容ではない。その証拠として、21世紀になってからも、殺人前科なし死者一名の事件で、高裁で死刑判決が下されている事件は存在する。
2004年10月29日には、女子高生誘拐殺人事件の坂本正人が東京高裁で逆転死刑判決を下されている。坂本は上告することなく確定した。
2005年3月19日には、女性強姦焼殺事件の服部純也が高裁で逆転死刑判決を下された。服部は上告し、2008年に最高裁で上告棄却。
2006年9月26日には、奈良女児殺害事件の小林薫に、奈良地裁で死刑判決が下され、控訴せずに確定した。
2009年3月18日には、名古屋闇サイト殺人事件の神田司に、名古屋地裁で死刑判決が下され、控訴取り下げにより確定している。
2011年3月1日には、横浜中華街店主射殺事件の熊谷徳久が、上告棄却され死刑が確定している。
これらの死刑囚たちは、奇しくも全員がすでに死刑執行されている。
住田以前の5人のうち、3人は高裁以上のレベルで死刑判決が支持されている。「死者一名では死刑になることはなかった」というのは誤導である。せいぜいが、死者一名の事件では死刑にある程度抑制的である、といえるに過ぎない。
なお、住田死刑囚は、裁判員制度での三人目の死刑確定者である。松原智浩は、四人目の死刑確定者だ。真島事件の死刑囚たちの死刑執行が近づいてきたように感じる。
最後に。全く報道されていないが、今回もまたVSフォーラムが死刑執行を支持する声明を出した。
7月13日執行の声明
その内容であるが、前回の田尻賢一の執行と、全く同じである。いや、一つだけ異なっている点があった。今回の執行人数として「2名」という文字を加えた点。それ以外は、全く前回と同一の内容である。
前回の声明
血の通わないテンプレートであり、「死刑執行」という、法の下に人命を奪う行為への、厳粛性や重大性にはそぐわない軽さと無機質さを感じる。死刑存置の立場にせよ、死刑執行の重大性への意識がここまで感じられないのは、法曹としていかがなものか。「今回の死刑執行に賛成」であり、法曹としてそれを意見表明するのであれば、より理を尽くして丁寧に説明を行うべきではないか。
また、西川の死刑執行は、再審請求中に行われた。被害者擁護の立場に立つとはいえ、「裁判を受ける権利」との整合性に全く思いを致さない姿勢には、疑問を感じる。
VSフォーラムが死刑廃止に反対の立場だということは、すでに周知されている。また死刑執行の場以外にもいくらでも意見を述べる機会はある。死刑廃止論者、死刑囚の支援者、あるいは死刑囚の親族の傷口に塩を塗り込む以外に、特段出す意義のない声明と感じられた。